カラフト伯父さんを観劇してきました。

f:id:sogabe8:20150428190959j:plain

  私が使っている家計簿アプリには「ジャニーズ」と「文化」という出費カテゴリがあるのですが、今日のチケット代をどちらとして登録するか迷っています。とても良い舞台でした。東京グローブ座で公演中の伊野尾慧主演カラフト伯父さんを観劇してきました。4月28日昼の部、当日券です。以下、舞台の内容のネタバレを含むので悪しからず。台詞等々うろ覚えの箇所もありますがご容赦ください。

 

 舞台は10年前に大きな地震の被害に遭ったある街の、地震で壊れた屋根がそのまま残る寂れた鉄工所。そこに一人で暮らす徹(伊野尾 慧)のもとに、借金取りに追われる父(升 毅)とストリッパーの女(松永玲子)が転がり込んでくる。
かつて、母が別の男と再婚した後、時々自分に会いに来る父を幼かった徹は「カラフト伯父さん」と呼んで慕っていた。だが、母の死を看取らず、震災の時も何の手助けもしてくれなかった父に対し、やがて激しい憎悪を抱くようになっていた。手を差し伸べてもらえなかったことへの絶望や怒り。今も生々しく残る地震への恐怖。多くの人が亡くなった中、自分だけが生き残ってしまったという罪悪感……。
さまざまな思いや震災で受けた心の傷に悩み苦しみ、将来への希望も無く生きる徹だが、父たちとの暮らしを通して少しずつ心を開いていくが……。

(カラフト伯父さん公式HPより)

 

 「ほんたうのさいわひ」を探し続けていた徹の日々はカラフト伯父さんが想像していたものよりもっともっと孤独なものだったと思います。伯父さんは母を亡くした子供を慰めるために「お母さんはほんたうのさいわひを探しに行ったんだ」と話したのかもしれないけれど、それって徹と母が過ごした日々は幸せではなかったということとイコールになり得ると思うんです。お母さんは伯父さんに「幸せだった」と言い残してたのにね。なんて残酷な言葉なんだろう、と。

 徹のカラフト伯父さんへの頑なな態度は信頼し尊敬していたヒーローであるカラフト伯父さん・実父の裏切りから。なんでもできるヒーロー像の失墜から徹の心に闇が広がっていく過程を独白するシーンの伊野尾さんの演技は、ものすごい迫力でした。舞台上で一人スポットライトを浴び、軽トラの二台で震災時の苦しみ、生き残ってしまったことへの後悔を叫び糾弾するように、しかしどこか落ち着いた声で吐き出していく一連の流れは思わず鳥肌が立ちました。勿論コミカルな演技も可愛かった!拒絶しているようで優しさが残る徹の独特な人との距離感の保ち方は伊野尾さんならではの作り込みだったと思います。

 

 これは超個人的な感想であり、多分演出家が伝えたかったこととはずれてると思うんですけど、「子は親を選べない」んだよなあ、と何度も思いました。というのもまず冒頭で徹が一人で住む鉄工所に転がり込んでくるところからその横暴さに呆れてしまって、なに父親面しとんじゃと徹にめちゃくちゃ感情移入してしまっていて。いつの間にかストリッパーの女と逃避行してるし、謝ればすむと思ってるところあるし(そして仁美は「許してあげてよこんなに謝ってるんだから!」とか言っちゃうタイプ)。あと徹がカラフト伯父さんに助けを求めて泣いていたことに対してカラフト伯父さんの言い訳が「俺にだって生活はある」*1って、なんてひどい大人なんだろうと思って。最後徹と仲直りして出てきたときは徹の心超広い!と思って感動しました。あと仁美のお腹から生まれてくる赤ちゃんもなかなか人生ハードモードですよね…

 

 午前中にフラゲしたChau♯のPVを見ていたときや劇場前の大きなポスターを見たときは「ああ今日も伊野尾さん綺麗なお顔だなあ」なんてのんびりした気持ちでいたのですが舞台が始まり車のヘッドライトに照らされながら*2現れた伊野尾さんは完全に寂れた鉄工所で働く職人で。顔が綺麗とか一度も思わなかった。貶してるとかじゃなくて、なんだろう、顔が綺麗とかそういうことに気を回す暇がないぐらい引き込まれてました。私の視力が悪いのと一階最後列だったのも関係するかもです。あっでもカーテンコール、優しいほほえみでピシッと気を付けをして会場を見回していた伊野尾さんは勿論超がつくほどお綺麗でした!

 

f:id:sogabe8:20150428191009j:plain

  当日券に並んでいた時思わず写真を撮ったぐらいとてもよく晴れていたのですが、舞台上は冬。クライマックスの出発に向けてどんどん会場内の温度が下がっていく演出や少しずつ夕日が沈んで暗くなっていったりする演出で、徹やカラフト伯父さんや仁美はどこかで生きている、と強く感じさせられました。

 

諸々が許すならもう一度いろんな表情に注目しながら観劇したいぐらいです。今日のチケット代は「文化」で登録したいと思います。

 

 

*1:この受け答えは結構序盤にあったので後半同じ質問をされたらまた違ったかもしれないです

*2:客席からだと逆光で顔がよく見えない憎い演出